読書感想 : 『寝ながら学べる構造主義』

国語の入試問題としてよく使われる作家の一人が本書の著者の内田さんだ。引っ張りだこ状態と言っても過言ではない。中学受験、高校受験、大学受験、いずれにおいても、問題を解いていると著者の文章に頻繁に遭遇する。おそらくここ15年ぐらいの間に受験を経験した方は、知らぬうちに著者の文章を読んでいるのではないだろうか。

 

本書はそんな著者が書いた構造主義の入門書だ。

構造主義とは?

著者はまず構造主義の基本的な考え方を示す。

構造主義というのは、ひとことで言ってしまえば、次のような考え方のことです。  私たちはつねにある時代、ある地域、ある社会集団に属しており、その条件が私たちのものの見方、感じ方、考え方を基本的なところで決定している。だから、私たちは自分が思っているほど、自由に、あるいは主体的にものを見ているわけではない。むしろ私たちは、ほとんどの場合、自分の属する社会集団が受け容れたものだけを選択的に「見せられ」「感じさせられ」「考えさせられている」。そして自分の属する社会集団が無意識的に排除してしまったものは、そもそも私たちの視界に入ることがなく、それゆえ、私たちの感受性に触れることも、私たちの思索の主題となることもない。私たちは自分では判断や行動の「自律的な主体」であると信じているけれども、実は、その自由や自律性はかなり限定的なものである、という事実を徹底的に掘り下げたことが構造主義という方法の功績なのです。

これだけ読めばとりあえず構造主義がなにかわかる。要するに、私たちは私たち自身が自分たち自身のことをコントロールしていると思っているが、それは錯覚であって、私たちに先立つなにものかによって私たちは常にすでにコントロールされていると言うことだ。

 

こうした定義づけに続いて、著者は構造主義を築き上げた思想家8名について簡にして要を得た説明を加えていく。彼らは共通して、”私たちは私たちに先立つ何ものかにコントロールされている”ことに注目した。

1. 構造主義が生まれるための「地ならし」をした思想家

マルクス

どの階級に属するかで人間は見え方がかわる

所属する階級によって人間は考え方を規定されてしまう。

フロイト

人間が直接知ることのできない心的活動が人間の考えや行動を支配している。

私たちの意識的行動は、実は私たちが意識し得ない無意識的なものによってコントロールされている。

ニーチェ

人間はほとんどの場合、ある外在的な規範の「奴隷」に過ぎない。

私たちは自分で考えて決めているようで、実は規範に従っているだけ。

2. 「構造主義の父」

ソシュール

私たちの経験は、私たちが使用する言語によって非常に深く規定されています。

人間は言語を用いて思い、考える。人間は言語の制約から逃れることはできない。

3. 「構造主義の四銃士」

フーコー

「いま・ここ・私」をもっとも根源的な思考の原点と見なして、そこにどっしりと腰を据えて、その視座から万象を眺め、理解し判断する知の構えをフーコーは「人間主義」と呼」んで批判します。

人間はどうしても「いま・ここ・私」を中心に考えてしまう。その縛りから自由になることはできない。

バルト

ソシュールの考え方を発展させた。つまり言語の制約を重視した。

レヴィ=ストロース

人間は生まれたときから「人間である」のではなく、ある社会的規範を受け入れることで「人間になる」

人間であるには規範に支配されなければならない。

ラカン

ラカンは精神分析の専門家で、フロイトの考え方を発展させた。つまり無意識的なもののの制約を重視した。

かなり簡単な整理ではあるが、以上が本書の内容だ。私は構造主義についての理解はこれでもう十分だ。

 

著者も認めているように構造主義者の文章は難しい。だが本書に難しいところはない。例え話をはさみながら構造主義のポイントをわかりやすく解説してくれている。私は座って読んだが、タイトルの通り「寝ながら」読んでも内容がサクサク頭に入ってくるのではないかと思う。

 

著者の手際の良さに脱帽だ。

乗り越えることが決してできない枠の中で私たちは生きているよ。